勇者

 電車に揺られて栃木県に向かう。途中、乗り換えの駅でお土産を購入した。

 「否定的な言葉を口にしない」先輩からかつて教えてもらった大事なこと。何年も前に教えてもらったこの言葉をできる範囲で守ってきた。物事の肯定的な側面を観察しようとする癖はこの教えが土台になっているのかもしれない。

 栃木に着き、駅に迎えに来てくれた先輩と合流。行列のできるラーメン屋さんを案内してもらった。とっても美味しかった。

 食事を済ませたあと先輩の家へ。

 顔を合わせて話したかったことを話すことができた。固定観念にとらわれずに状況を突破していく先輩の力を言葉の端々に感じることができ嬉しかった。

 時間が来たので、また駅まで送っていただいた。車の中で、神様からお預かりしていた聖書の言葉を共有し、車を降りてから共に祈った。

 彼は信仰の勇者なのだ。

 力あるイエス・キリストが彼の名を呼び続けている。

福島に行きなさい

 飛行機のフライトまで3時間以上ある。時間にはだいぶゆとりがある。特急の座席でくつろぎながら東京を目指す。

 ひとつ気になることがある。福島県にいる姉に福音を届けるようにという語りかけだ。

 とはいえ、既に飛行機のチケットを取っている。払い戻しの効かないチケットだ。財布の中も心細くなってきている。福島まで行っても帰って来れる保証はない。この語りかけは「自分の声」なのだろうと考えることにした。

 旅のはじまりから、何度も神の備えを経験しながらも、僕はまた現実を見つめていた。

消えた時間

 空港には、かなりゆとりを持って到着する予定だ。

 ところが、特急電車を降りる駅をひとつ間違えた。本来の駅へ戻り、成田行きの電車を待つ。時間にゆとりを持っていてよかった。駅を間違えるのは今回の旅ではじめてだった。

 何本も電車が目の前を通り過ぎる。目当ての電車がなかなかこない。少し焦り始める。このままではフライトの時間に間に合わないかもしれない。そこで気がついた。さっきから目の前を通り過ぎていく電車こそが成田行きの電車だった。

 飛行機は僕を乗せることなく沖縄へ飛び立った。

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