次の予定は

 クルセードの余韻と共に目覚めた朝。

 次の予定はまだ決まっていなかった。

 明日か明後日、仕事の依頼人とは別口からまとまったお金が振り込まれる予定ではあったが、それまでの間、僕のポケットには少額のお金しかない。帰りのチケットを購入することはできない。

 みくさんたちは、今日の午後の便で沖縄に戻ることになっている。

 ホテルの中で神に祈った。「行き先を教えてください。聖書を通して教えてください」

 スマホの聖書アプリを開くと、旅に出る前に参加した、みくさんの教会の土曜礼拝で語られた箇所の近くの聖句が開かれていた。

 この聖句を届ける相手は1人しかいない。栃木県に住む信仰の先輩の顔が心に浮かんだ。

軽いポケット

 栃木県に向かうのだと心に決めたあと、K兄弟からクルセード会場の片付けボランティアを募るメールが届いたので、ホテルをチェックアウトして淀橋教会へ向かった。

 淀橋教会で、みくさんたちと別れた。別れぎわ、僕の所持金が1000円程度しかなく入金があるまで数日かかるかもしれないことを知っていたみくさんが、まとまった額のお金を渡そうとしたが、感謝しつつそのお金を受け取ることをお断りした。

 「大丈夫、心配しないで」みたいな事を言ったと思う。

 必要は全て主が満たしてくださる。

 因みに、僕はクレジットカードを持っていない。

数駅分あるこう

 会場清掃の奉仕を楽しんだあと、スタッフの方々と一緒に近くの韓国料理屋さんで韓国料理をご馳走になった。

 おいしい食事と兄弟姉妹の証を聞いてお腹も心も満たされた。

 韓国料理店をでて、駅前で兄弟姉妹と別れ、僕は歩き出した。栃木県への道のりを調べるため、コンビニのイートインスペースに座りスマホを開く。

 経路を調べたところ、目的地までは1500円ほどかかるようだ。所持金は1000円くらいだったので数駅分歩こうと思い、コンビニを出て歩き始めた。

 目的地の反対側に向かって。

アートなスマホクリーナー

 都会の喧騒のなかで目をキョロキョロさせながら歩いていると、絵画ギャラリーのキャッチのお姉さんに捕まった。

 数分後、お姉さんの押しに負けた僕は850円するスマホクリーナーを手にしていた。イスラエル出身の画家の作品がプリントされたアートなスマホクリーナーだ。

 ポケットの中では小銭が愉快に踊っている。

 ギャラリーを出て地図を再確認すると、そもそも反対方向であることに気がついた。

 一体ここに何をしにきたのだろう。

 アートなスマホクリーナーに、電車に乗る選択肢は綺麗さっぱり拭い去られた。

 栃木県まで徒歩で1日か2日かかりそうだ。

4%

 暑い。歩き続ける。

 スマホの充電が少なくなっている。予備のバッテリーは持っていない。コンビニでスマホの充電器をレンタルする持ち合わせもない。

 ペットボトルの水もスマホの充電に比例して少なくなっていく。

 充電残り4%

 沖縄に先に帰っているみくさんと連絡が取れなくなるのは困ると思った。心配させたくない。

 神様に「スマホの充電が切れてしまうと彼女を心配させてしまいます。どうか、スマホの充電がなくなることのないようお願いします」と祈った。

 すると「主はわたしをいこいのみぎわに導かれる」という聖書の言葉が与えられた。みことばから励ましを受け歩を進める。

水辺のほとり

 水色の建物が見えてきた。ここがいこいのみぎわだろうか。建物の前でしばらくたたずむも違うと感じたので再び歩きだす。

 高田馬場駅の近くまできた。

 コンビニで飲み水を購入する。

 コンビニをでると、教会系のカフェが目の前に現れた。カフェの入り口で店員さんに、スマホの充電をさせていただけませんかと声をかけると、カフェ入り口の待合スペースで充電をどうぞと案内していただいた。

 充電しながらカフェの店内を眺めると、多くの人たちが飲み物を飲みながら憩っている。

 いこいのみぎわに座りながら充電をさせていただいていることに気がついた。神様に感謝の祈りを捧げる。

 カフェを出る時、店員さんに感謝の気持ちですとアートなスマホクリーナーをお渡ししようとするも「お礼は結構です。また、お会いできることを楽しみにしてます」と笑顔で送りだしてくれた。

 アートなスマホクリーナーをカバンにしまい、また歩きはじめる。

池袋西口

 新宿から歩き始めて何時間経過しただろう。既に日は暮れている。

 20時頃、池袋駅の西口に来た。

 駅前の広場でベンチに腰を下ろして足を休める。休んでいると栃木にいる先輩と連絡がとれた。会う約束をしたが、すぐにではなく、流れに任せて会えそうな時にまた連絡すると伝えた。

 マンガ喫茶とか適当な場所に泊まりますと先輩に伝えた。

 とはいえ、今日は広場で野宿だろうなと思えた。「足を伸ばして眠りたいです」と祈った。

足を伸ばして

 しばらくすると、この広場によくない雰囲気を感じた。それで、この広場にある霊的な契約の解除と悪しきものの力を縛る祈りをした。

 祈り終えてスマホを開くと、ひとつの決算アプリに目が行った。このアプリを使うという考えはまったくなかったが、使えることがわかった。

 数時間後、僕は池袋駅近くのマンガ喫茶の店内にいた。完全個室な快適な空間のなかで眠りに落ちていく。

 足を伸ばして。


 主は私の羊飼い。
 私は乏しいことがありません。
 主は私を緑の牧場に伏させ
 いこいのみぎわに伴われます。
 主は私のたましいを生き返らせ
 御名のゆえに 私を義の道に導かれます。

詩篇23篇

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